レポート(取材記事)

MICS-MVPの安全導入に向けて基本手技をエキスパートと共に学ぶ(1/6)

2020年1月26日(日)、メドトロニックイノベーションセンターにて、「Next Standard ~MICS Approach for Valvular Diseases 次世代の心臓外科手術をエキスパートと共に体験する」が開催されました。本プログラムでは、MICSの習得および成績向上を目指す心臓血管外科医に向けて、ノットプッシャーとリング縫着を中心にしたハンズオントレーニングやレクチャーが行われました。
プログラムのトレーナーを務めたのは、西 宏之先生(大阪急性期・総合医療センター)、阿部 恒平先生(聖路加国際病院)、坂口 元一先生(近畿大学)です。

MICS-MVPの特徴と適応患者の選択

はじめに、西 宏之先生より、MICS-MVPの概要とその特徴、MICS-MVPを適応する患者選択のポイントに関するお話がありました。

プログラムの目的と内容

西先生

 

今回のプログラムの目的は、MICS-MVPを安全に導入することです。その中でMICS-MVPの手術手技向上を目指すために、どのような工夫が必要となるかを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

MICS-MVPのメリットとデメリット

まず、右小開胸MICS-MVPのメリットは、術創が目立たず美容的に優れていること、早期社会復帰が可能であることです。
また、僧帽弁の視野展開が正中切開に比べて良好であることもメリットです。遠距離からの操作と器具の扱いに慣れれば、MICS-MVPは術者にとっても利点の大きい術式と言えます。心臓外科医にとって必要な手技の一つといえるため、今回のプログラムでぜひ皆さんにマスターしていただきたいと考えます。

一方でデメリットは、MICS-MVP特有の合併症があり得ることです。その中には非常に重篤で、患者さんの命に危機が及ぶようなものもあるため、MICS-MVPでは可能な限り合併症の予防に努めることが大切です。
また、一般的に、MICS-MVPは正中切開に比べて手術時間が長いことが知られています。特にMICS-MVPを始めて間もないうちは、時間が長くなることが当たり前だと思っていただいて構いません。
2015年の調査によれば、正中切開で4時間を要する症例をMICS-MVPで行った場合の手術時間は、約5時間程度とされています。皆さんがMICS-MVPを実際に行う際には、まずこのくらいの時間を目標にしてみてください。

MICS-MVPの適さない症例①

初めてMICS-MVPを執刀する際には、MICSに適している状態の患者さんを選択することが重要です。適切な患者選択を行えば、重篤な合併症が起こる可能性は低くなるため、最初は無理のない選択をしましょう。

【MICS-Mitralに適さない症例】

たとえば、以下の症例はMICS-MVPに適していません。

  • 大腿動脈の石灰化がみられる
  • LVEF<25%
  • 肺動脈圧>70mmHg
  • 遮断不可能症例
  • 高度肥満症例
  • AR>Ⅱ度

など

意外と見落とされやすいのが、ARの程度です。MICS-MVPでは順行性の心筋保護のみで行うことが多いため、ARが増悪するリスクがあります。ARが高い場合、良好な経過を辿らないことがあるため、注意が必要です。

そのほか、在院死亡と出血再開胸、脳合併症のリスク因子としては、以下が挙げられます。

  • 年齢>70~75歳
  • 脳血管障害の既往
  • 頸動脈病変
  • 呼吸機能障害(FEV1.0%<60%)
  • 心筋梗塞の既往
  • 三尖弁閉鎖不全症
  • MICS-MVP症例数が10例未満であること

特に、MICS-MVP実施数が10例未満である施設は、在院死亡などのリスクが11%以上にのぼると考えられています。そのため、MICS-MVP導入初期には、上記に該当する症例は避けることを推奨します。

MICS-MVPの適さない症例②

視野不良の症例を事前に見極めることも、大切なポイントの一つです。視野の良さは胸骨椎体間距離に影響されます。

たとえば、胸骨椎体間距離が6cmを切ると僧帽弁が押しつぶされてしまい、良好な視野を得ることができません。 また、肥満体である患者さんの場合は、横隔膜が脂肪で押し上げられて左右に広がらないため、胸骨椎体間距離が広くても視野不良となることが多いです。

一方、良好な視野を得やすいのは、胸骨椎体間距離が長く、胸腔が縦に長いケースです。

事前のCT画像をしっかりと確認して適切な症例選択を行い、安全にMICS-MVPを行いましょう。

次:MICS-MVPのセットアップ

 

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