レポート(取材記事)

OPCABにおけるバイパス吻合の知識と技術をエキスパートから学ぶ(1/5)

2019年12月15日(日)、メドトロニックイノベーションセンターにて「New Frontier~Beyond the Future OPCABの醍醐味をエキスパートと共に体感する」が開催されました。今回のトレーニングプログラムのテーマは“拍動シミュレーションモデルを用いたハンズオンを通して心拍動下での吻合をマスターする”です。プログラムのトレーナーは、阿部 恒平先生(聖路加国際病院)と金 一先生(岩手医科大学)が務めました。

 

阿部恒平先生によるレクチャー

プログラムは、阿部恒平先生によるレクチャーから開始されました。レクチャーの前半は、On-Pump CABGとOff-Pump CABG(OPCAB)を比較した様々な研究を紹介しながら、OPCABが本当に有用といえるかについて全員で考えるという内容でした。続く後半では、CABGの吻合法についての解説がありました。

OPCABの優位性を様々な試験の結果から考える

阿部先生

 

まず、OPCABがどのような点で良い方法と言えるかについて考えてみたいと思います。
これまでの冠動脈バイパス術の歴史の中では、OPCABとOn-Pump CABGを比較検討する様々な試験が行われてきました。その中でも有名な試験は、18施設2203症例でOPCABとOn-Pump CABGの前向きランダム化比較試験を行ったROOBY試験です。ROOBY試験では、一年後の遠隔成績はOff-Pump CABGが不良であるという結果となりました。死亡率や再血行再建などの有害事象の発生率が高く、グラフト開存率も低いことが示されたのです。また、唯一OPCABに優位であると予想された合併症の割合についても、両者に有意差はみられませんでした。しかし、本試験は、対象者の年齢や性別に偏りがあった、執刀医の3割がレジデントだった、などの問題点がいくつか挙げられています。
その他、ROOBY試験の後に行われたCORONARY試験などでも、有害事象発生率や再血行再建率などにおいて、両者に有意差は確認できませんでした。

一方で、総合的にOPCABの優位性が示された試験もあります。2003年のSMART試験では、死亡率に差はないものの、OPCABは輸血率やCKMB、Troponin T 値が低いという結果でした。さらに、2011年に示された遠隔データでは、5年生存率、7年生存率共にOPCABがやや良いという結果が出ています。
日本で2005年に実施されたJOCRI試験においても、無輸血率の高さや手術時間の短さなどにおいてSMART試験とほぼ同じ結果が示されました。ただし、狭窄のない開存率はOn-Pump CABGが良好であるとされました。

2016年のメタ解析では、高リスク群に対するOPCABは生存率や脳梗塞発症率など、あらゆる面において優位性が示されました。さらに2018年のアメリカの研究では、施設の症例数や術者の経験数が豊富なハイボリュームセンターではOPCABによる死亡率が低い、という結果が出ました。

これらの試験結果を総合的にまとめると、まず、OPCABではバイパス本数や完全血行再建率が低く、再血行再建率が高いことが示されました。一方で、OPCABは高リスク群に対して特に優位であることが分かりました。
この試験で、施設または術者の経験症例数が一定数以上である場合にOPCABの予後が良好になることが確認されたことから、OPCABは術者や施設の経験と技量によって、その優位性に差が生じる手法であるということができます。だからこそ、日々トレーニングを重ねてOPCABの技術を磨くことが大事です。症例経験を積む機会を狙うためにも、今日は吻合術のテクニックをしっかりと習得しましょう。

CABGの吻合における重要なポイントとは?

阿部先生

 

CABGのバイパス術を行うにあたり、LITA-LADの習得は非常に大事です。LITA-LADで良好な早期・遠隔開存率を保つためには、いくつかのポイントを抑えておくことが必要になります。

まず、CT撮影をすでに行っている場合は、手術室に入る前に血管が脂肪内走行していないかを確認することが重要です。心臓CTを行うことで脂肪内走行の有無が確認できるため、術前からしっかりと状態を把握しておきましょう。
また、対角枝に静脈グラフトを吻合すると、flow competition(流拮抗)が生じて、つないだバイパスが詰まったり狭窄したりする危険性があるため、できる限り対角枝は静脈につながないようにします。その他、適切な長さでITAを使用し、最後に血流パターンとグラフト走行のねじれを確認することも大切です。
このようなポイントを抑えることで、LITA-LADをより確実に行うことができるのではないかと考えます。

○ 確実な吻合をするために覚えておくべき6つのポイント

OPCABで確実な吻合を行うためには、以下の6点に注意しましょう。

  1. 心拍動下で手術を行うOPCABでは良好な視野の確保が大事です。視野を十分に展開して、安全に手術を進めましょう。
  2. 吻合孔周囲は十分に血管の表面が見えるよう丁寧に剥離を行います。
  3. 一針ごとに内腔を見て針先端の位置を確認してください。もしも針先端が内腔を超えてしまった場合、裏側を巻き込んでしまう恐れがあります。万が一の事態を想定して確認作業を行うことで、より確実に吻合を進めることができると考えます。
  4. 吻合の際には内膜を持たないように注意します。施設によっては内膜を持って吻合を行うこともあるようですが、持った瞬間に解離するリスクがあるため、できる限り内膜は持たないことを推奨します。
  5. LITA-LADがねじれた状態でつながってしまうことを避けるため、toeとheelがずれないように注意して吻合するように心がけましょう。
  6. 吻合の方向と形をイメージすることが大事です。heel側は冠動脈側を、toe側ではグラフト側を歩むようにすることを意識しましょう。また、heelは少し開く形に、toe側では猫の手のような形にすることをイメージすると綺麗に吻合できます。

○ グラフト吻合の注意点とポイント

まず、グラフトをトリミングした後、冠動脈のheelを内から外に向かって深めに一針かけます。最初の一針を深めにかけることによって、heel sideの出血を予防することができます。

グラフトの取り扱い方で重要な点は、摂子を手から離すと針の先端が内腔に隠れてしまうため、摂子を把持したまま持針器でグラフトを受け取ることです。摂子でグラフトの両側を持ち上げると冠動脈壁も一緒に持ち上がり、糸をかけやすくなります。

以下にお見せする動画は、実際の吻合の様子です。

まずは、手前にスネアをかけて血管が傷つかないように注意しながら切開していきます。

一針ごとに内膜に針先端があるかを確認し、組織を引っ張りながら血管を垂直につなぎましょう。ここで重要なことは、血管にまっすぐに向かう形で針を動かせているかを目で注意深く確認することです。針先の方向を見誤るとサイドの壁を拾ってしまうことがあります。万が一サイドの壁を取ると狭窄を起こしてしまうので、組織を大きく取りすぎないように意識してください。

次:マシオモデルを用いた一枝バイパスのトレーニング

 

 

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