レポート(取材記事)

第9回日本心臓弁膜症学会アフタヌーンセミナー 
三尖弁逆流に対する手術のタイミング(後半)(1/3)

2018年12月14日(金)・15日(土)、第9回日本心臓弁膜症学会が開催され、その初日に日本メドトロニック株式会社共催のアフタヌーンセミナー「三尖弁逆流に対する手術のタイミング」が行われました。
本セミナーでは、有田武史先生(九州大学)と松居喜郎先生(北海道大学)を座長にお迎えし、日本を代表する5名の先生方よりご講演をいただきました。本記事では、セミナー後半で行われた外科セッション、江石清行先生(長崎大学)、松宮護郎先生(千葉大学)、高梨秀一郎先生(榊原記念病院)のご講演内容をレポートします。


▲ 座長を務める松居喜郎先生(写真左)・有田武史先生(写真右)


プログラムの目的と概要


▲ ご講演中の江石清行先生

江石先生

 

三尖弁逆流のメカニズムについて考える前に、三尖弁の構造についてお話ししたいと思います。三尖弁の特徴は以下の通りです。

  • 通常、後尖は2つか3つのscallopから構成される
  • 前乳頭筋は前尖と後尖に腱索を出しており、Moderator bandが連続している
  • 後乳頭筋は中隔尖と後尖に腱索を出している
  • 後乳頭筋は心室中隔の内側下方に位置している

それでは、これらの特徴を踏まえた上で、三尖弁逆流が起こるメカニズムについて当院における症例を交えながらご説明します。

三尖弁のテザリング~spiral suspensionによる修復

三尖弁のテザリングがあると、三尖弁形成術を行っても、術後も三尖弁逆流が残ってしまうことが多いことは明らかとなっています。そのため、術前に三尖弁にテザリングを認めた場合には、手術でしっかりとテザリングを修復させることが大切です。 そこで、私たちは「spiral suspension」という新しい修復技術を開発しました。これは、前乳頭筋の根部から副乳頭筋の根部を後乳頭筋のところまで吊り上げ、それらを心室中隔から通し、中隔弁輪の方に抜いて引き上げる技術です。

上のスライドのデータは、三尖弁形成術だけを行った群とspiral suspensionを行った群の術前と術後を比較したものです。
弁輪の中隔尖と前尖の交連部をC点として、そこから前乳頭筋のトップ、後乳頭筋のトップ、副乳頭筋のトップまでの距離を計測しています。
結果、三尖弁形成術だけを行った群では前乳頭筋のトップからC点の距離が伸びてしまっていますが、spiral suspensionを行った群では5~6mmほど短くなっていることがわかります。
また、弁尖の面積も計測していますが、spiral suspensionを行った群では面積が小さくなっており、しっかりと結合していることもわかります。
それでは、どのような症例に対してspiral suspensionを行うかですが、症例によってはテザリングが生じているのかどうかわかりづらいこともあります。そのような症例に対しては、経食道心エコーで3D構築するとテザリングが生じているかがはっきりとわかることがあります。

弁尖の逸脱がみられる症例

次に弁尖の逸脱です。弁尖の逸脱が生じているような方では、弁輪拡大とテザリングを合併していることがあります。

上のスライドの症例は32歳男性で、経食道心エコーで前尖の逸脱と中隔尖のテザリングが確認できます。MPRでみてみると、更に後尖の逸脱も確認することができます。 このように、病変が隠れている可能性があるので、細かい検査で1つ1つの弁尖をしっかりと確認することが重要です。

術前に、三尖弁逆流が生じる原因を正確に捉えることが大切

3Dリングによる三尖弁形成術の治療成績や耐久性は近年、非常に向上しています。先ほどご紹介したspiral suspensionは、重症な機能的三尖弁閉鎖不全症の形成術においても、有用な方法であると考えます。
また、三尖弁逆流のメカニズムは多岐に渡ります。そのため、術前検査では様々な視点から詳細な評価を行ったり、必要に応じて3D構築した画像で検証したりすることを推奨します。

次:高度機能三尖弁逆流に対する手術のタイミング

 

 

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